ドイツにも前立本尊!? 善光寺とそっくりの三尊像
善光寺(長野市)の前立本尊にそっくりの「阿弥陀(あみだ)三尊像立像」がドイツ・リンデン民族学博物館にあり、同じ鋳型で作られた可能性のあることが9日、分かった。米国の美術収集家の手を経てドイツに渡ったとされ、県文化財保護審議会委員の武笠朗(むかさあきら)・実践女子大教授(日本彫刻史)は「袈裟(けさ)の衣紋や体つき、顔立ちが極めて似ている」と指摘している。
同様の阿弥陀三尊像は善光寺信仰の広がりとともに全国各地で作られたが、ここまで似ているのはまれといい、若麻績信昭・寺務総長は「お前立さんにうり二つで驚いている。比較調査も検討していきたい」としている。御開帳に合わせて4月4日から長野市の県信濃美術館で開かれる「"いのり"のかたち-善光寺信仰展」(県、信濃毎日新聞社など主催)での里帰り展示に向け、同館がリンデン民族学博物館と交渉している。
武笠教授は、文化財保存修復学会が2002年に発行した調査報告でこの阿弥陀三尊像の存在を知り、昨年末にドイツ南部・シュツットガルトにある同博物館を訪問。県史など文献にある前立本尊の写真やデータと比較した。
武笠教授によると、三尊とも前立本尊と同じ銅製。高さは前立本尊の中尊が42センチ台、左右の脇侍(わきじ)が30センチ台で、三尊像の方がそれぞれ数ミリ-1センチ大きいが「計測時の誤差の範囲。同じ鋳型で作られたか、一方が他方を原型にして作られた可能性もある」とする。前立本尊は13世紀後半、鎌倉時代の作と推測されている。
前立本尊は鍍金(ときん)仕上げなのに対し、三尊像は朱漆塗(しゅうるしぬり)の金箔(きんぱく)仕上げ。違いについて武笠教授は「海外に流出する際、彩色し直す例は少なくない」とする。三尊像の光背は残っていないが、銅製の台座は「像と同時期の作である可能性が高い」とする。前立本尊の光背と台座は江戸時代に作られた木製だ。
信濃美術館によると、リンデン民族学博物館は三尊像を1984年、米国の著名な日本美術収集家ハリー・パッカード(1914-91年)から購入した。その前の来歴は不明という。パッカードは第二次大戦後に滞日。インフレなどで収集家らが手放した古美術品を大量購入した。
県史編纂(へんさん)の際に前立本尊を調査した根立研介・京大大学院教授(日本彫刻史)は「同じ型ならば、鎌倉時代の金銅仏(こんどうぶつ)の中でも大変珍しい。同じ型でなくとも、同一の作者、同一の工房と分かるだけでも意味は大きい」とし、今後の調査に期待している。
